〔関連書籍〕 1492 コロンブス 逆転の世界史
世界史の転機となった1492年近辺を中心に、当時の世界の各地域の視点で解説。
1 「世界は小さい」
コロンブスが新大陸への航路を見出し、それまでは発散に向かっていた世界が、一気に収斂する方向に変わった。
現今私たちが住んでいる世界の大部分は西暦1491年にスタートしたと言っても過言ではない。したがって、歴史家が世界の歴史で潮目が変わる単一の年を選ぶとすれば、それはこの年‐1492年‐以外にはありえない
香辛料の産出地についての適当な理論。
ヨーロッパ人は香辛料の産地をめぐって喧々諤々論議した。「ナイル川の漁師は、地上の楽園の木から落ちるジンジャーとアイオウとシナモンの実を袋に入れ、これをエデンから川下に流した。」
金の産出地についての適当な理論。
奇妙な説も出回った。「金はニンジンのように地から生える」、「アリがこれを塊の形に育てる」、「洞窟にすむ裸の人間がこれを掘り出す」など。
2 「スペインを神の思し召しのままに」西ヨーロッパからのイスラム教徒の放逐
カスティリャによるグラナダ陥落、異端審問・ユダヤ人追放などについて説明がある。
3 「騎馬軍団の砂煙が見える」 アフリカでのイスラム教の苦闘
当時のモロッコ(北アフリカ)、大マリ帝国、ジェンネ、ティンブクトゥ、トゥーアット(トゥアレグ)、ガオ、ウォロフ(西アフリカ)、ソンゲー、モッシ、ベニン、コンゴ(中央アフリカ寄り)、エチオピア、キルワ(東アフリカ)など、他書ではあまり説明がない地域の権力・宗教(古代の異教、イスラム)・交易について説明がある。
とくにソンゲーの台頭や、ポルトガルの現地進出については詳しく説明がある(とくにキリスト教化したコンゴ)。
川を所有するには、サヘル(草原)の制圧が必要不可欠だった。ソンニ・アリはこれを熟知していて、そのように行動した。残酷という彼の評判は(中略)彼本人の戦略でもあった。
コンゴでは支配者層は直ちにポルトガル人は役に立つと感じた。(中略)王はポルトガル人に教会を建てるよう優雅に命じ、古い神々に対する冒涜ではとの抗議の声が呟かれると、これにその場で死を命じた。ポルトガル側はこれを恭しく押止めた。
4 「こんな悲惨な光景は初めて」地中海世界とスペイン・ポルトガル系ユダヤ人の離合集散
南ヨーロッパでのユダヤ人コミュニティの影響力と迫害が解説されている。
いかなる理性的な視点を総合しても、スペインからのユダヤ人追放は、とんでもない愚挙だったと評するほかはない。
5 「神は我らに怒っておられるのだろうか?」 イタリアでの文化と騒乱
主にフィレンツェを舞台とした、のちの宗教改革のはしりとなる世紀末思想からスタートした異端の起こりについて。
6 「暗黒の土地」へ ロシアとキリスト教圏の東漸
主にモスクワ大公国(イワーン)の興隆、タタールのくびきからの脱却について。
7 「血の海」 コロンブスと大西洋横断のリンク
ポルトガル・スペインがマデイラ諸島で植民地支配の練習をさんざんしていたという話。
けっこう負けたりしており、けっこう面白い。
8 「唄う柳の枝」 中国、日本、朝鮮
当時は最強国だったはずの中国が国内の権力グループ闘争などの影響で遅れてしまった話など。
9 「ミルクとバターの海」 インド洋の沿海部
ヨーロッパ商人(サント・ステファーノ、コンティ)などによるインド洋沿海の探索や、アフリカ東岸(スワヒリ)の交易について。
ビジャヤナガル、バーマニド王国(インド)、モンバサ、ゲディ、キルワ(アフリカ東岸)、パサイ、メラカ(マレー、スマトラ)
10 「第四の世界」 大西洋と両アメリカの土着社会
おなじみマヤ、アステカ、インカの悲惨なる結末の話。